向中野あらかわ皮フ科

帯状疱疹

当院の帯状疱疹治療の特長

  • 抗ウイルス薬を使用して、早期治療を行います。帯状疱疹の症状を少しでも早く軽減し、合併症を防ぐために、迅速な治療開始を重視しています。
  • 患者様ごとの痛みの程度や症状に応じて、最適な鎮痛方法を選択し、生活の質を改善することを目指しています。
  • 鎮痛作用や治癒促進効果が期待できるスーパーライザー(近赤外線治療器)を適宜併用します。

帯状疱疹とは

帯状疱疹とは、体の左右どちらか一方に、神経に沿って帯状に赤い斑点や水疱などが生じ、その部分に強い痛みが起こる疾患です。水痘帯状疱疹ウイルス(水ぼうそうウイルス)によって引き起こされます。水痘帯状疱疹ウイルスは水ぼうそうを経験した後も神経節に潜伏しており、免疫力が低下した際に再活性化して帯状疱疹として発症します。

日本人の成人の90%以上の方が、帯状疱疹の原因となる水痘帯状疱疹ウイルスを持っていて、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるとされています。一般的に中高年の方が多く発症しますが、免疫力が低下している若年層でも罹ることがあります。ストレスや過労、病気などが免疫力の低下を招き、水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化するリスクを高めます。

帯状疱疹の症状

帯状疱疹では、水痘帯状疱疹ウイルスが神経を荒らしながら広がっていくため、初期は神経に沿ってピリピリとした痛みや違和感を感じます。その後、痛みを感じる部分の皮膚が赤くなり、水ぶくれが生じ、膿んだ後にかさぶたに変化していきます。初期治療が遅れると神経が受ける損傷が大きくなってしまい、症状が治癒した後に帯状疱疹後神経痛が残ってしまうケースがあるため、早期の受診が重要です。

帯状疱疹の初期症状

帯状疱疹の初期症状では、体の片側の皮膚の一部にかゆみやピリピリとした痛みを感じます。その後、数日以内に赤みや水ぶくれが現れます。発症前に全身のだるさや軽い発熱など、風邪に似た症状が生じることもあります。

帯状疱疹の発症部位

帯状疱疹は、体の左右どちらか片側に、神経に沿って帯状に発症することが一般的です。特に胸部、腹部、背中、顔などに多く見られます。顔に帯状疱疹が発症した場合、視神経や聴神経に影響を及ぼし、視力低下や難聴、顔面麻痺などの合併症を引き起こす可能性があります。特に目に帯状疱疹が発症すると「眼帯状疱疹」と呼ばれ、失明のリスクもあるため、早期の治療が必要です。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹の治癒後も、神経痛が長期間にわたって残ることがあります。これを帯状疱疹後神経痛(PHN:post-herpetic neuralgia)と呼び、特に高齢者に多くみられます。帯状疱疹後神経痛の痛みの程度には個人差があり、締めつける、焼けるような持続的な痛みや、ズキンズキンと疼くような痛み、触れるだけで激痛を感じるアロディニアと呼ばれる痛みを感じる場合があります。これらの痛みが原因で、日常生活や睡眠に支障が生じるケースもあります。

帯状疱疹の原因

帯状疱疹は、過去に罹った水ぼうそうの水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することによって発症します。ストレス、疲労、免疫力の低下などが誘因となり、潜伏していたウイルスが再び活動を始め、神経に沿って炎症を引き起こします。このため、帯状疱疹は過労や病気、免疫抑制剤の使用などで、体の抵抗力が弱まると発症しやすくなります。

帯状疱疹の接触感染

帯状疱疹は、多くの方が免疫を持っているため、他人にうつることはまれです。ただし、水痘帯状疱疹ウイルスに感染していない方、水ぼうそうの予防接種を受けていない方や過去に水ぼうそうを経験していない方が接触すると、水ぼうそうとして感染する可能性があります。感染予防のためには、発疹が乾燥するまで直接的な接触を避けることが大切です。

帯状疱疹の治療

帯状疱疹の治療方法には、内服薬、外用薬、鎮痛剤、点滴を用いるものがあります。

内服薬

帯状疱疹の治療では、抗ウイルス薬(バルトレックス、ファムビル)の内服が効果的です。抗ウイルス薬にはウイルスの増殖を抑える働きがあり、早期に治療を開始することで発疹の拡大や神経の損傷を最小限に抑えることができます。一般的に、発症から72時間以内に治療を開始することが推奨されています。

内服薬の効果が現れるまでには2日間ほどかかるため、治療を開始した直後は皮疹の範囲が拡大する場合がありますが、効果がないと思って治療を自己中断したり、処方された量よりも多く内服したりしないようにしてください。

バルトレックス
バルトレックスは、抗ウイルス薬の一つであり、帯状疱疹の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える効果があります。発疹が出現してから早期に服用を開始することで、症状の重篤化を防ぐだけでなく、帯状疱疹後神経痛のリスクを軽減することも期待できます。医師の指示に従い、定められた期間きちんと服用するようにしましょう。
ファムビル
ファムビルも、バルトレックスと同様に帯状疱疹の治療に用いられる抗ウイルス薬です。ウイルスのDNA複製を阻害し、発疹の広がりや痛みを軽減します。特に早期治療で用いることで高い効果を発揮するため、帯状疱疹の発症初期に医師の診察を受けることが大切です。
アメナリーフ
アメナリーフは比較的新しい抗ウイルス薬で、他の内服薬に比べて、服用回数が少ないというメリットがあります。ウイルスの増殖を迅速に抑える効果があり、継続して薬を服用することが難しい方の場合に有用な帯状疱疹治療の選択肢になっています。

外用薬

帯状疱疹の治療では、患部に外用薬を使用してかゆみや痛みを軽減し、感染を防ぐことも重要なため、皮膚の状態に応じて適切な外用薬を処方しています。感染予防のための抗菌薬を含む外用薬の使用や、被覆材を併用することもあります。また、患部の保湿を維持することも大切なので、適切なスキンケアを行っていただき、症状の治癒を促進します。

鎮痛

帯状疱疹の痛みは強いことが多いため、非ピリン系解熱鎮痛薬(カロナール)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs、ロキソニン)、麻酔クリームなどの鎮痛薬を使用して痛みの緩和を図ります。鎮痛作用や治癒促進効果が期待できるスーパーライザー(近赤外線治療器)を早期から併用します。強い痛みが続く場合には、オピオイド系の鎮痛薬や神経ブロック注射(ペインクリニックへご紹介)が適応となる場合もあります。

 

点滴

重症の帯状疱疹の場合、特に高齢者の方や、糖尿病患者などで免疫抑制状態にある方に対しては、抗ウイルス薬(ゾビラックス)を点滴で投与することがあります。内服が難しい方や症状が重篤な患者様に対して有効な治療方法です。全身管理や頻回点滴の観点から大学病院や基幹病院へ紹介することが多いです。

帯状疱疹後神経痛の治療

帯状疱疹の後遺症である、帯状疱疹後神経痛(PHN)の治療では主に内服薬が用いられます。

内服薬

帯状疱疹後神経痛の治療は長期にわたることが多く、患者様の生活の質を保つためにさまざまな方法を組み合わせて治療を進めていきます。疼痛治療薬(リリカ)や各種の鎮痛薬のほか、抗うつ薬や抗てんかん薬が使用されることもあります。これらの薬剤には神経の興奮を抑え、痛みを和らげる効果があります。また、痛みが続く場合には、神経に直接作用する局所麻酔薬や、痛みの感じ方を変える効果のある神経調整薬などの方法が検討される場合もあります。強い痛みが続く場合には、オピオイド系の鎮痛薬や神経ブロック注射(ペインクリニックへご紹介)が適応となる場合もあります。

帯状疱疹ワクチンの予防接種

帯状疱疹の予防には、ワクチンの接種が有効です。帯状疱疹の発症率が高くなる傾向にある、50歳以上の方に推奨されており、帯状疱疹の発症リスクを低減することができます。

帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹の発症を予防するだけでなく、発症した場合の症状の重症化を防ぐ効果もあるため、帯状疱疹の後遺症である帯状疱疹後神経痛のリスクが高くなる50歳以上の方や、過去に帯状疱疹を発症したことがある方には接種をおすすめしています。

当院では、下記の2種類の帯状疱疹ワクチンの予防接種に対応しています。

 

接種回数 発症を防ぐ効果 注射料金(税込み)
生ワクチンタイプ(ビケン) 1回 50%以上減少 8,800円
不活化ワクチン 2回 90%以上減少 22,000円/回

(参考文献)
日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「ヘルペスと帯状疱疹」