当院のあせも治療の特長
- 生活指導(高温多湿の環境を避け、入浴により清潔を保つ)が重要であることを説明します。
- 症状次第では、お子さんの肌状態に合わせたステロイド外用薬を用います。
- 外用薬の塗布方法を丁寧に指導し、ご自宅でのケアをサポートします。
- 繰り返しにくいライフスタイルを提案し、予防に役立つ生活習慣のアドバイスを行います。

あせもは、医学的には「汗疹(かんしん)」と呼ばれる皮膚のトラブルで、汗をかきやすい夏場にお子さんによく見られます。赤ちゃんから思春期のお子さんまで、どの年齢でも起こる可能性があります。
あせもは、汗が毛穴に詰まってしまう(エクリン汗腺の閉塞)ことで発生します。子どもの毛穴は大人に比べて小さく、詰まりやすい特徴があります。汗が肌の表面に出られず、毛穴の周りに溜まったり、周囲の組織に漏れ出ると炎症が起こり、かゆみを伴う発疹ができてしまうのです。
あせもの代表的な症状は、以下の通りです。
発疹は、ごま粒大から米粒大まで様々で、たくさん集まって現れることが多いです。赤ちゃんの場合は首の後ろや背中に、幼児から思春期のお子さんは脇の下や胸、背中などに発疹ができやすい傾向にあります。
かゆみの程度には個人差がありますが、子どもの場合は我慢できずに掻いてしまうことがよくあります。ただ、掻きすぎると肌が傷つき、細菌が入って症状が悪化する可能性があるので注意が必要です。
あせもには、大きく分けて3つのタイプがあります。お子さんのあせもがどのタイプなのかを把握しておくと、適切なケアの仕方がわかります。
あせもは、お子さんの汗腺から出る汗の排出がスムーズにいかないことで起こります。本来、汗は肌の表面から外に出て、体温調節に役立つのですが、何らかの原因で汗が毛穴に詰まってしまうと、毛穴の周りに汗が溜まって炎症が起きてしまうのです。
子どもがあせもを起こす一番の原因は、夏の暑さや運動による発汗です。夏場は気温も湿度も高く、汗をたくさんかく季節です。お子さんの汗腺はまだ未発達なため、大量の汗を処理しきれずに毛穴に詰まらせてしまうことがあります。また、子どもは元気いっぱいに遊ぶので、体を動かした後や、熱い風呂から上がった時もあせもができやすいのです。
お子さんの体質もあせもの原因になることがあります。生まれつき汗をかきやすい体質だったり、肥満気味だったりすると、あせもを起こすリスクが高まります。特に肥満の場合は、肌と肌の間の摩擦で汗の排出が妨げられ、あせもにつながることもあります。
赤ちゃんの場合は、おむつかぶれもあせもの原因となります。おむつ内の蒸れやおしっこによる刺激が、あせもを引き起こします。
大人の場合は、加齢による肌の変化があせもの原因になることもあります。年を重ねると肌のバリア機能が低下し、汗の排出もスムーズではなくなるため、あせもを起こしやすくなるのです。
赤ちゃんや幼児の場合は、首の後ろや背中、わきの下など、日頃のスキンシップで触れる機会が多い部位にあせもができやすいようです。これは汗腺が未発達なために、汗の排出がうまくいかないのが原因だと考えられています。
大人や年長のお子さんの場合は、わきの下、胸、背中、お腹など、汗腺が多く集中している部位にあせもが発生しやすいのが特徴です。とりわけわきの下は汗腺の密度が高いため、あせもの好発部位と言えるでしょう。
顔や頭皮にあせもができることは比較的少ないのですが、皮脂の分泌が多いため、あせもが悪化しやすい部位でもあります。耳の後ろや首の後ろのラインもあせもの好発部位の一つです。お子さまの普段見えない部分にも、目を配っておくと安心です。
あせもは、汗をかきやすい部位に発生しやすい傾向にありますが、お子さんによって個人差があるものです。お子さんの体質をよく観察して、汗をかきやすい場所を把握しておくことが大切です。
あせもの治療法は、症状の程度やあせもの種類によって異なります。軽度のあせもであれば、自宅でのケアだけで十分な場合もありますが、症状が重かったり、長引いたりする場合は、皮膚科専門医による治療を受けることが大切です。
あせもの治療の基本は、汗を上手に処理し、炎症を抑えることです。自宅でできるケアとしては、こまめに汗を拭き取ること、肌に優しい綿素材の服を着せること、お子さんの肌を清潔に保つことなどが挙げられます。かゆみがひどい場合は、皮膚科を受診してステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を用いて症状を和らげます。
水晶様汗疹は、汗が肌の表面近くに溜まることで発生するタイプのあせもです。多くの場合、水疱が自然に乾燥して治まるため、特別な治療は必要ありません。
ただし、水疱が広い範囲に広がっていたり、かゆみがひどかったりする場合は、小児皮膚科を受診しましょう。ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬などを処方し、症状を和らげる治療を行います。
水晶様汗疹の治療で最も大切なのは、水疱を掻き壊さないことです。子どもは我慢できずについ掻いてしまいがちですが、水疱が壊れると細菌が入って悪化する可能性があるため、注意が必要です。かゆみがある時は、冷却シートなどを使って症状を和らげるようにしましょう。
紅色汗疹と深在性汗疹は、汗が毛穴に詰まることで発生するあせもです。放っておくと症状が悪化し、炎症が長引くこともあるため、早めの治療が肝心です。
これらのタイプのあせもには、まずステロイド外用薬を使って炎症を抑える治療を行います。ステロイド外用薬には、かゆみや赤みを鎮める効果があります。さらに抗ヒスタミン薬を一緒に使うことで、かゆみ抑制効果もアップします。
症状が重い場合は、医師の判断でステロイド内服薬や抗生物質の内服薬が処方されることもあります。ステロイド内服薬は全身の炎症を抑え、抗生物質は細菌感染を防ぐ効果が期待できます。
あせもの治療と同時に、肌の清潔を保つことも重要です。汗をかいたら、こまめにタオルで拭き取り、肌をきれいに保ちましょう。お風呂に入る時は、刺激の少ない石鹸を使い、ゴシゴシ洗わないようにするのがポイントです。
紅色汗疹や深在性汗疹の治療には時間がかかることがあります。症状が良くなってきても、すぐに治療をやめずに、根気強く続けることが大切です。また、普段から肌に優しいスキンケアを心がけ、肌のバリア機能を高めることで、あせもの再発を防ぐことができます。
あせもは、適切な予防と対策を行うことで、発症リスクを大幅に下げることができます。日頃からできる工夫を習慣づけて、お子さんの肌トラブルを未然に防ぎましょう。
まず、暑い環境を避け、涼しい場所で過ごすことを心がけましょう。室内ではエアコンを使用して、適切な温度に保つことが効果的です。また、外出時は、日傘や帽子を使用して、直射日光を避けるようにしましょう。
お子さんの肌着は、肌に張り付きにくい綿素材のものを選ぶのがおすすめ。化学繊維など、汗を吸収しにくい素材は避けた方が無難です。汗をたくさんかいたら、こまめに着替えさせるのも大切なポイントです。
汗をこまめに拭き取り、肌を清潔に保つことが重要です。汗を放置すると、細菌が繁殖し、炎症が悪化する可能性があります。タオルやハンカチを使用して、優しく汗を拭き取るようにしましょう。
かゆみがある場合は、掻かずに、冷却シートやクールパックを使用して、症状を和らげることが効果的です。
入浴時は、肌に刺激の少ない石鹸を使用し、ゴシゴシと強く洗わないように注意しましょう。また、入浴後は、肌を十分に乾かすことが大切です。
保湿も、あせもの対策に効果的です。肌が乾燥すると、バリア機能が低下し、炎症が悪化する可能性があります。肌に合った保湿剤を使用して、肌の水分を保つようにしましょう。
多くの場合、あせもは自宅でのケアで改善しますが、症状が重かったり長引いたりする時は、早めに小児皮膚科を受診しましょう。
例えば、あせもが体の広い範囲に広がっていたり、痛みやかゆみがひどかったりする場合は要注意です。発熱や倦怠感など全身症状が出ている場合も、受診が必要なサインといえます。
水疱や膿疱ができている場合や、症状が2週間以上続いている時も、診察を受けた方が賢明でしょう。お子さんの様子に変化があったら、迷わず医師に相談しましょう。
(参考文献)
新生児期の皮膚トラブル実態とその関連要因